述井庸治に

『永遠の別れ』

 私は「気分を一新し出直そう」と、妻の勧めで、彼女の故郷である荏原町にやって来た。
 傷心の私を、この町は優しく迎えてくれた。そして、私は英会話スクールを開業した。

 開業して2年、生徒も少しずつ増え、スクールが休みの日曜日、私は銀座へ買い物に出かけた。銀座四丁目のあたりを歩いていると
「述井さん?」
 一人の女性が私に声をかけてきた。見ると日本レゴ社で事務をしていた女性。
 私はレゴブロックの現況が知りたく
「やあ、久しぶり。お茶でも飲まない?」
 彼女を喫茶店に誘い、レゴブロックについて聞いていると
「述井さん、重盛さんご存じですよね」
「うん、もちろん。今、彼どうしてる?」
 すると、彼女は
「重盛さん、亡くなりましたよ」
「えっ、なんで?」
 と、言いながら私の目からなぜか涙が溢れてきた。
 彼女の話によると、重盛はカード会社を辞め自分の会社を設立した。彼のビジネスは日本人留学生を海外に送り出す仕事。商売は順調だった。しかし、バブル崩壊時、会社は経営難に陥り彼は毎晩のように酒を飲み歩いた。そして、最期は肝臓ガンでこの世を去ったという。
 その後、私はどうやって家に帰ったか分からない。覚えているのは帰りの電車の中、重盛との色々な思い出が走馬灯のように私の頭の中を駆け巡っていたことだ。