魂友(ソールメイト)


 《序 章》突然の電話

 学生運動に現(うつつ)を抜かし、就職先のない私がやっと手にした職業(しごと)、それは小さな商社の営業マン。そこで私はレゴブロックに出会った。   
 レゴブロックとはデンマーク生まれの教育玩具、私はこの製品に一目惚れ、北海道から九州までレゴブロックの市場を作るため日本全国を飛び回った。
 しかし40歳を迎える年、18年間育ててきた愛するレゴブロックに別れを告げた。
 何もする当ての無い私は、妻の勧めで彼女の故郷である荏原町にやって来た。
 私はこの町がとても気に入った。都心にありながら高層ビルがない。また銀座、渋谷などのビッグタウンに30分で行ける。活気溢れる商店街もあり、緑も多い。町を歩くと、私の知る人達が気さくに声をかけてくれる。そして何よりも恋人(レゴブロック)と別れた傷心の私をこの町は優しく迎え入れてくれた。
「住みたい町に住む」これは私の夢、私はこの町に住むことを決めた。そして英会話スクールを開業したのである。

 私が初めてデンマークでのレゴ国際会議に参加したのは36歳の時、日本レゴ社のマーケティング責任者として出席した。会議は全て英語で行われる。しかし、会議で私の英語はまったく通用しなかった。
 学生時代、英語は私の得意科目、しかしその英語がまったく歯がたたない。まず、喋れないので話し合いに参加出来ない。また、配られた資料も日本語に訳しているため、頭の中で日本語と英語が喧嘩している。私が今迄学校で習ってきた英語は一体何だったのか?
 私はその時から、自分の英語を読めて書けて話せる「実践英語」に変えていった。
 日本にいて日本語が出来なければ、日本で暮らしていくことは出来ない。同様に、世界に出て世界語(英語)が出来なければ、世界で活躍することは出来ない。英語を勉強するということは、自分の世界を日本から世界へ広げること。英語を教えるということは、生徒達を世界という大舞台に立たせてあげること。
「そうだ、私の『実践英語』を教えよう」
 そして、私は英会話スクールを始めた。

 《突然の電話》
 スクールを開業して間も無く四半世紀、私は4年前に還暦を迎えた。
 いつものように教室にいると、スタッフのひとりが
「先生、新規の方からお電話です」
 私が電話にでると、女性の声で
「ホームページをみてお電話しました。実は私の夫が仕事で海外に行くことが多くなりましたが、夫は英語が上手く使えません。それで英会話学校を探しています。いちどお伺いして詳しい説明を聞きたいのですが?」
「分かりました。それでは、いつがよろしいですか?」
「夫は土・日が休みなので、今度の土曜日はいかがでしょうか?」
「分かりました。それでは1時30分ということでいかがですか?」
「結構です。その時間にお伺いします。よろしくお願い致します」
「分かりました。それでお名前は?」
「重盛と申します」
「重盛さんですね。それでは土曜日、1時30分にお待ちしています」
 と電話を切る。

 「重盛」という名前を聞いた時、私の心に過去の記憶が蘇ってきた。