ミラクル・ツネの世界

『別 れ』

 日本のマーケットをよく知る私と、アメリカに留学しマーケティングを学んできた重盛、2人のコンビネーションは、日本でのレゴブロックの売上を着実に伸ばしていった。

そんな時、社長から私達に話が来た。

「今、君たちは30代、私は50代、年代の差を埋めるため40代の部長を入れようと思うがどうだろうか?」

その時、私と重盛は32歳、たしか社長は55歳だったと思う。

「コミュニケーションが良くなるんならいいんじゃないの」ということで、私達は社長の申し出を受け入れた。そして私達よりひと回り年上の44歳の部長が、社長と私達の間に入ってきた。彼は広告代理店から引き抜かれ、独自のマーケティング理論を持っていた。

しかし、私達は彼のマーケティング理論についていくことが出来なかった。机上論で実践的とは思えない。私達は、たびたび上司である彼と対立した。

そんなある日、私は重盛に言った。

「重盛、辞めようか、この会社」

すると重盛が答えた。

「そうだよね。やってられないよね」

そんな会話が、しばしば交わされるようになった。ただ私自身は、日本各地にこの会社の営業所を作ってきたし、また何よりもレゴブロックが好きだったので、半分は冗談のつもりだった。しかし、重盛は本当に辞める気になっていた。

そこである日、私は重盛に言った。

「重盛、俺はこの会社辞めないよ。この会社にまだ愛着があるし、何よりも俺はレゴブロックが好きだ」

すると重盛は言った。

「述井さん、俺は述井さんのその考えは立派だと思うよ」

そして、さらに続けた。

「だけど俺は決めた。この会社を辞める」

いちど言ったら後へは引かない。そんな重盛の性格を知る私は、引き止めることはしなかった。

それからまもなく、朝、私が出勤すると、重盛が私のところに来て言った。

「述井さん、俺、今日社長に辞表を出すから」

そして、重盛はこの会社を去って行った。