述井庸治に

あとがき 『前兆』

「あなたはソウルメイトの存在を信じていますか?」
 突然、マットが私に質問してきた。どういう流れでこの質問がでたのか私は覚えていない。マットはアメリカ人、日本の文化を研究するため日本に来ている。
 私が「ソウルメイト」という言葉に出逢ったのは、この時が初めて。しかし何となく意味は分かる。
「うん。信じてるよ」
 私は答えた。
「だから、あなたはオプティミスト(楽観主義者)なのだ」
 マットが言った。
「だけど、私にはソウルメイトはいないよ」
 と、私が言うと
「えっ、どう言う意味?」
 彼はアメリカ人、今の自分にソウルメイトがいなければ、ソウルメイトの存在は信じられない。
 そこで、私は
「だから、私は今でもソウルメイトを探している」
「これが日本人の考え方だ」
 と言った。
 しかし、この時の私は、自分にソウルメイトが現れるとは思ってもいなかった。ただ、マットに日本人の考え方を教えてあげたかった。
 それからしばらくして、重盛の甥が、そして息子が私のところにやって来た。
 今思うに、これは「前兆」、重盛のことをほとんど忘れている私に
「述井さん今から行くよ」
 という重盛からのメッセージだったかも知れない。